コラム:第55回 FFTCG:『ChapterⅤ開発秘話』
すでに公開されているカードやコラムを読んで気付いた方もいると思いますが、『ChapterⅤ』ではテキスト欄の記述に関していくつか変更されました。今回のコラムではその変更点と変更した理由に関して述べてみたいと思います。
4行半の壁

FF-TCGのテキストボックスは全部で4行半の文章が入るようになっています。カードイラストの大きさとおもしろいテキストを入れるためのギリギリのバランスでこの形になっているわけですが、開発しているとどうしても色々な能力を持つカードを作りたくなります。
FF-TCGはすでに『ChapterⅤ』まで完成していますが、毎回、複雑な能力を持つカードはテキストが入らないことで頭を悩ましていました。その中でも特にネックになっていたのがEXバーストです。
EXバーストはどこを見る?

EXバーストは逆転要素のある非常におもしろいカードなのですが、テキスト欄にEXバーストと書く都合上カードの効果は必ず3行半に納めなくてはならず、なかなかおもしろい効果のカードが作れない状況でした。たとえば『ChapterⅡ』の開発序盤に【2-033R】アスラにEXバーストをつけるという話もありましたが、それではとてもじゃないけどテキストボックスに納まらないので、カードのアスラらしさを優先するために泣く泣くあきらめたということもありました。また、EXバースト用のオートアビリティ以外の能力を持たせるのが非常に難しくなるという問題もあります(【1-145R】ユウナのようなアビリティがせいいっぱいです) 。
しかも、カードがめくれたときのEXバーストの確認はテキスト欄ではなく、アイコンで確認することが一般的です。極端に言うとテキスト欄のEXバーストはそのカードを初めて見たときくらいにしかみられてはいないのではないでしょうか。
そこで『ChapterⅤ』 からは思い切って文章中のEXバーストを取り除いてしまうことにしたのです。これにより『ChapterⅤ』 ではEXバーストを持ちながらさらにアクションアビリティを持たせることも可能になり、今まで以上におもしろく、かつ原作の雰囲気を再現させやすくなったのです。
探して~公開して~手札に加えて~シャッフル

もう1つ、テキスト欄の長さで開発を悩ましていたのが、デッキの中から特定のカードを探しだすタイプのアビリティです。今までの書き方ですと「あなたのデッキからオヴェリア1枚を探してもよい。そうした場合、それを公開して手札に加える。あなたのデッキをシャッフルする。」というような、初めて見た人なら首をかしげたくなるような記述になっていました。もちろんこれらはすべて必要な要素なわけですが(探すのはあなたのデッキからだし、公開しないと相手が分からないし、シャッフルも必要です)、それでももはやスッキリとさせなければいけないのは間違いないことでした。
考えた結果、採用されたのが「サーチ」という表現でした。カードゲームをしている人ならおなじみの俗語ですが、これをそのままキーワードにしてしまうことにしたのです。
先ほどの文を『ChapterⅤ』 準拠にすると「オヴェリア1枚をサーチし、手札に加えてもよい。」というようになります。これは文章が分かりやすくなっただけでなく、EXバーストのときと同じように、バラエティに富んだサーチカードを作れるようになったということでもありました。
なお、「サーチ」のルール的定義ですが、あなたのデッキから指定されたカードを探して公開し、その後、文中のサーチ以下に記載されていることを実行し、デッキをシャッフルする。というものになります。
チョコボかチョコボという名前のカード???

EXバーストとサーチはどちらもテキストの冗長を解消するためのものでしたが、テキスト表記にはもう1つ、解決しなければならない問題点がありました。それが「○○という名前のカード」です。しかもわかりにくいことに、この書き方をしている場合はたいていその前に「○○と」という言葉がつくのです。
『ChapterⅣ』の【4-033U】イザナには「チョコボかチョコボという名前のキャラクターカード」と書いてあります。これは前者が「チョコボ」というジョブを持つカードであることを示し、後者がチョコボという名前のカードであることを示します。これは一般兵たちの関係でこのような記述になっているのですが、やはり分かりにくさが先に立ってしまいます。
とはいえゲームの性質上、ジョブとカード名に同じものがあるのは避けようがありませんので、記述を変えることで対応することになりました。
これは非常にシンプルな変更で、【ジョブ(チョコボ)】、【カード名(チョコボ)】という表記になります。イザナなら「【ジョブ(チョコボ)】か【カード名(チョコボ)】のキャラクターカード」という文になります。
ただ、一般兵以外の固有名詞を持つキャラクターカードの場合は【カード名(○○)】のような記述にはならず、単にそのカードの名前だけが記載されます。
ブレイクゾーンに置く

記述上の大きな変更は以上になりますが、もう1つだけ、「ブレイクゾーンに置く」という行動をルール上で明確にすることになりました。
【1-080C】陰陽士のようにあなたが「コントロールしている」と書いてあるのと【3-058R】断罪の暴君ゼロムスのように「ブレイクゾーンに置く。」とだけ書いてあるのがあり混乱のもととなっていましたが、「ブレイクゾーンに置く」、と指示された場合にブレイクゾーンに置くことができるのは、何か特殊な指示がない限り自分がコントロールしているもののみになります。
『ChapterⅤ』は1年ぶりの大型セットということもあり、この1年間で出てきた課題に関して上記のようにできる限りの対応を行なっております。今後もFF-TCGでは柔軟な姿勢でより分かりやすく楽しめるように工夫していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。